歯医者での治療費が戻ってくる?医療費控除や対象となる治療について
近年、医療費の増加が社会的な課題として取り上げられています。特に高齢化が進む中で、医療費の負担が家計に大きな影響を与えることもあります。そこで、医療費控除という制度が注目されています。
本記事では、医療費控除について詳しく解説します。
1. 医療費控除とは
医療費控除とは、所得税や住民税などの税金から、自己や扶養家族の医療費を差し引いて支払うことによって、一定額を控除する制度です。
これにより、家計の負担を軽減し、医療に必要な費用を支払いやすくすることを目的としています。
2. 医療費控除の対象となる医療費
医療費控除の対象となる医療費には、以下のようなものがあります。
- 病院や診療所での診察や治療費
- 薬局での薬の購入費
- 歯科治療費
- 眼科治療費
- 入院費など
ただし、これらの費用は一定の条件を満たさなければなりません。例えば、保険適用外の医療費や、自己負担分などが対象となります。
歯科治療費においても、対象となる治療とならない治療があります。
対象となるもの
- インプラント
- 虫歯や歯周病治療などの一般診療
- ジルコニアやセラミックなどの詰め物・被せ物
- 小児の矯正治療
- 成人の噛み合わせ改善を目的とした矯正治療
- 入れ歯
- 通院のための交通費など
対象とならないもの
- ホワイトニング
- 審美的(見た目)改善のための矯正治療
- 予防を目的とした治療
- デンタルローンの金利や手数料
- 歯ブラシや歯磨剤などの物品
詳細はリンクの国税庁のウェブサイトをご覧ください。
3. 医療費控除額の計算方法
医療費控除は以下の計算式を使用します。医療費控除額は、最高200万円です。
(その年に支払った医療費 - 医療費補填金額)- 所得金額の5%(上限10万円)
医療費補填金とは?
医療費補填金とは、医療費の補填を目的に支給される保険金や給付金などのことです。保険金・給付金の例として、傷害費用保険金、入院費給付金などがあります。
そのほかには、健康保険法の規定で支給される療養費、出産育児一時金、家族出産育児一時金、家族療養費、高額療養費、高額介護合算療養費も該当します。
これら医療費補填金や所得金額の5%といったあたりが少しややこしいですが、特に給付金などを申請しておらず、かつ所得金額が200万円を超える方の場合、
その年に支払った医療費の合計 - 10万円
が医療費控除額となります。
ただし、医療費控除は1年間の所得金額から差し引かれる「所得控除」です。実際に還付される金額を知るには、所得税の税率を掛け合わせる必要があります。
次の項目で、実際にいくらぐらい還付されるかの計算方法を記載します。
4. 実際の還付金額の計算方法
還付金の計算は、医療費控除額 × 所得税率といった計算方法になります。
所得税率は1年間の所得によって大きく変わるため、ご自身の所得税率がいくらかを良くご確認ください。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円以上194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円以上329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万円以上694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円以上899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円以上1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円以上3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」
つまり、所得が1,000万円の方が、年間100万円の医療費をご自身で支払ったと仮定すると、
100万円(医療費)ー 10万円 = 90万円(医療費控除額)
90万円 × 33%(所得税率)(0.33)= 29万7000円(実際の還付金・所得控除額)
となります。
結構複雑で難しいですね。
5. 医療費控除の申請方法
医療費控除を受けるためには、所得税や住民税の確定申告時に、医療費の領収書や診療明細書などを提出し、申告する必要があります。税務署などの担当窓口で手続きを行うことで、医療費控除を受けることができます。
年末調整では医療費控除を受けられないため、会社員の方でも確定申告を行わなければなりません。
6. 医療費控除の意義
医療費控除は、高額な医療費による家計の負担を軽減するために重要な制度です。特に、重度の病気や障害を抱える人々や高齢者にとっては、大きな支援となります。
また、医療費の支払いが家計に与える負担を減らすことで、医療サービスの利用を促進し、健康な社会の実現にもつながります。
まとめ
医療費控除は、医療費の負担を軽減し、家計に負担をかけずに医療サービスを受けることができるため、積極的に活用していきたい制度の一つです。
また医療費控除があることで、定期的な健康診断・予防医療・歯科検診など、健康管理に積極的に取り組むことが可能となります。これにより、疾病の早期発見や予防が促進され、健康的な生活が支援されます。
こういった制度を上手く活用し、是非お口の健康のために歯医者さんを定期的に受診しましょう。
最後に、医療費控除を受ける際には、領収書や診療明細書などの書類をしっかりと保管しておくことをお忘れなく。